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 運動器の軟部組織の画像診断や評価には,その優れた描出能力から,MRIが診断機器の主体として用いられてきた.しかし近年では超音波画像診断装置が,高周波プローブの開発や画像処理の向上により高い描出能力を備えるとともに,簡便で非侵襲的な検査を行うことができることから,その有用性が注目されるようになってきた. 超音波画像診断装置は,減衰係数の高い骨や肺組織で遮蔽されない限り,軟部組織を描出することに優れるため,骨表面に存在する筋,靱帯の評価には有用である.また,超音波画像診断装置は運動器を動的に観察することも可能であることから,従来の画像診断装置では困難であった運動器に関する情報を得ることができる.肩関節,肘関節の運動では関節角度により寄与する筋や靱帯が大きく変化するため,その機能評価には静的な評はじめに価よりも動的な評価が有用であり,超音波画像診断装置を用いた評価は臨床上重要な情報になる.したがって,超音波診断装置を用いた肩関節および肘関節の静的・動的な画像情報は,上肢機能の多角的な知見を得る上で重要である.しかし,超音波画像診断装置を用いた報告の多くは運動器の器質的な傷害像に関するものであり,運動器の動的な機能評価に関しては検討の余地がある.理学療法士が超音波画像診断装置を用いて運動器の機能制限の評価を行うことは,リハビリテーション室での簡便かつ客観的な理学療法評価や治療効果判定を可能にする.さらに,従来はMRIでの評価が主流であった深層筋や靱帯・腱の状態の把握にも超音波画像診断装置で対応できる. 本稿では,超音波画像を用いた肩関節と肘関節の評価法の概要について述べ,両関節の代表的な疾患の傷害画像を提示する.さらに,両関節の機能制限を反映する超音波検査法について筆者らの知見を基に解説する.    肩関節の代表的疾患の傷害像を把握するための超音波検査肩関節の超音波検査32理学療法 31巻1号 2014年1月超音波画像を用いた肩と肘の評価超音波画像を用いた理学療法評価法    *北里大学大学院医療系研究科    (〒252 ― 0373 神奈川県相模原市南区北里1 ― 15 ― 1)  **北里大学医学部整形外科学 ***北里大学医療衛生学部リハビリテーション学科理学療法学専攻 高 橋 美 沙*Misa TAKAHASHI, RPT  見 目 智 紀**Tomonori KENMOKU, MD, PhD*,***高 平 尚 伸*,***Naonobu TAKAHIRA, MD, PhD1. 超音波検査が有用な肩関節の疾患には腱板損傷があり,加えて肩関節周囲組織として重要な上腕二頭筋長頭腱,肩甲下筋腱,棘上筋腱,棘下筋腱を観察する.2. 超音波検査が有用な肘関節疾患の代表例は野球肘であり,診断の指標として上腕骨小頭,内側側副靱帯前斜走線維を観察する.3. 超音波検査による腱板の機能評価として肩峰骨頭間距離や筋厚の測定がある.また,肘関節内側側副靱帯の評価として腕尺関節裂隙の測定がある.4. 超音波検査により,疾患の傷害像のみならず運動器の機能制限を評価することは,理学療法における客観的評価や治療効果判定のために重要である.

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